はじめに | 梅毒という病 | 江戸の梅毒 | 吉原と梅毒 |
分類 | 期間 | 症状 |
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初期硬結ができる。痛み・かゆみのない「でっばり」が感染部に発生する。 これが破れてビランや潰瘍になる。この潰瘍がとても硬いため、硬性下疳と呼ばれる。 ふともものリンパ線が腫れる。 痛みを伴わないために見過ごすことが多く、いつの間にか治ったように見えることが多い。 |
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第2期 | 約2〜3ヶ月後 |
全身、主に顔や胴体に発疹(バラ色のためにバラ疹といわれる)が表れる。 首や肘、脇の下など、表皮に近い部分のリンパ腺が痛む。 発熱・倦怠感・頭痛などがおきる。 部分的に毛が抜ける。 免疫ができるために数週間で症状は消えるが、3〜6ヶ月後にまた再発することが多い。 皮膚が部分的に白くなる。 |
第3期 | 約3年後 |
丘疹や潰瘍の発生。 ゴム腫(ゴムのように弾力感のある腫れ)の発生。 |
第4期 | 約10年後 |
脊髄梅毒(神経痛・麻痺など)。 脳梅毒(痴呆・無気力・言語障害・けいれん・視覚障害)。 これらの症状は第2期から発生することもある。 |
先天梅毒 |
死産・流産の多発。 発疹・ゴム腫。 粘膜の異常により、鼻炎が長く続く。 視力障害・まひ・知能障害。 骨膜炎・関節炎・骨格、永久歯の奇形。 まったく症状の出ない場合もある。 |
かさっかき おらが手本と 異見する
とら息子 親の目を盗んで 鼻が落ち
このように、当時手の施しようのなかった病に対し、人々は笑い、親しむ傾向にありました。
また、鳥屋についていて毛髪が抜け落ち、うちしおれている様が美しい、ということまで言われていました。
梅毒にかかって一人前と言われても、治療法があるわけではありません。
高級遊女は自分の稼ぎから「出養生」といって寮(別荘)で養生することができましたが、下級遊女は悲惨なものでした。
これらの遊女は遊女屋のふとん部屋や行灯部屋に入れられたまま放置され、時には食事すら満足に与えられなかったこともありました。
さらに、運良く第2期で症状の止まることもありましたが、第3期に進むと、容貌も崩れ、遊女としての商品価値は皆無になります。
そうなると遊女たちは吉原を追い出されます。
夜鷹に身を落としたり、親元に返されたりするのはよいほうで、すさまじくは川や投げ込み寺に捨てられたりもしました。
吉原には、このように悲惨な側面もあったのです。